今、何故、b-Japan計画・BT戦略本部が必要か

2001.11.22

  1. バイオ分野ほど、「国民のQOLと経済・社会に直結し、大きなインパクトを持ち」、「国際的に熾烈な競争下」にあり、「スピードを要求され」、しかも、多くの課題が「省庁に広くまたがっている」分野は無い。
    (参考1)
     BT(バイオテクノロジー)は、遺伝子機能の解明と活用とによって、革新的な医療及び創薬、機能性食品(病気を予防し健康を増進する食品)、環境に優しい物質生産プロセスの開発等極めて大きな可能性を秘めた技術領域。近年、研究開発を精力的に推進してきたが、今後、急速な産業化の段階を迎える。小泉内閣による構造改革後の日本経済を牽引する成長シナリオを提供するものとして大きな期待。
    (参考2)
      産業界の試算によると、BTの産業規模は、2010年において市場規模100兆円、雇用創出60万人以上と予測。 米国の大学発ベンチャー企業の大半はBT。我が国でも、既存の医薬、化学、食品等の大企業に加え、ベンチャー企業の輩出が大きく期待される。

  2. 従って、安全性や生命倫理を含む、BTの実用化・産業化推進の基本方 針を、国家の最高レベルで確認し、国民の理解の増進を図ることが不可欠。 更に、医薬品、食品、環境等に係る安全審査体制の拡充、規制・制度の改革等多方面に亘る総合的な取組みを迅速に進めることが肝要

  3. 科学技術の国家戦略については「総合科学技術会議」で議論され、策定されている。「総合科学技術会議」の機能とこれまでの活動は高く評価。
    しかし、この、科学技術国家戦略に基づいて得られた研究成果の実用化・事業化を推進するための総合的な国家戦略は、今の日本には無い。「科学技術戦略」と並行して早急に[BT実用化・産業化国家戦略]を作るべき。
    「規制・制度改革」や「実用化・事業化インフラ整備」は時間がかかり、効果が出るにも時間を要す。 研究成果が出てから議論していたのでは遅すぎる。

  4. 以上の認識のもとに、BT実用化・事業化の阻害要因と解決策を広く調査・議論して作成したのが今回のJABEX提言。 結果は、138項目にのぼった。「規制・制度改革」がその大半を占め、残りは基盤整備、政策提案。これらは政府各省に広く関わっている。

  5. これらの提案は広範多岐にわたっており、総合科学技術会議で扱うことの困難な課題も多く存在。例えば、
    医療制度、保険制度、薬事審査体制、安全政策、農業政策、教育、国民理解、政府調達、税制、実用化段階における倫理、遺伝子情報管理問題、地方を含めた各省連携体制(バイオマス利用等)、各種バイオ産業政策など。
    今回のJABEX提言でも、「総合科学技術会議」だけで対応できない課題が74%(138中103)を占めている。

  6. これらの提言には、既得権益、行革課題、政治課題などが数多く含まれており、守旧派勢力の強い抵抗が予想されることから、個別に対応することには限界があり、総理からのトップダウンで対応することが必須。

  7. なお、一部に、BT戦略本部の設置が「基礎研究」軽視につながることを心配する向きがあるようだが、バイオ産業界としては、従来から「真理を探究する基礎研究は、人類の進歩の源泉であり、極めて重要」と認識している。また、基礎研究の位置付けの問題は「BT戦略本部」ではなく、「総合科学技術会議」が扱う課題であると考えている。

  8. 「BT戦略本部」は、「IT戦略本部」と違い、これから日本が世界をリードするために設置しようとするもの。 欧米においては、BTを、ITと並んで、21世紀の最重要戦略分野と位置付け、官民の総力を挙げて推進している。
    この分野の国際競争は日を追って熾烈化している。日本も早急に国家戦略を 作り実行すべき。日本はここでまた失われた10年を繰り返してはならない。
    (参考3)
    米国では1999年に第三次ヒトゲノム計画(生命倫理、人材育成を含む)を策定し、また、ブッシュ大統領自らも生命科学分野を今後一層強化することを言明。
    欧州委員会も、年末までに、知識ベース経済構築、競争力強化、雇用創出のための「バイオ戦略」を策定予定。 なお、欧州委員会は、「BTは21世紀において経済的にITよりも重要になる」と指摘している。

  9. 今ここで明確な国家戦略を策定し、産官学の総力を結集して、研究開発に止まらず、BTの実用化・産業化を推進する体制を整えることができるかどうかは、将来の国家の命運を大きく左右すると考えられる。

  10. 従って、早急に、総理の強力なリーダーシップの下に内閣に「BT戦略本部」を設置し、我が国としてのBT総合戦略―「b-Japan計画」の策定に着手すべきと考える。
    (参考4)「BT戦略本部」の設立目的
    2010年までに、世界最先端のバイオソサエティとバイオベース経済(健康・安心と自然との調和を同時に達成する社会と経済)を実現するため、BT総合戦略(b-Japan計画)を速やかに策定、実施する。

  11. なお、バイオは「科学技術」との関連の強い分野である。
    従って、「BT戦略本部」で実用化・事業化戦略を作る場合、「総合科学技術会議」との密接な連携と整合性の確保は不可欠である。 両者は競合・対立するものではなく、提言の中にもあるとおり「車の両輪」である。

以上


 

(質問1)

「総合科学技術会議」と「BT戦略本部」と頭が二つにならないか。 (総合科学技術会議の国家戦略と競合し、屋上屋となるのではないか?)

(答え)

 総合科学技術会議は「科学技術」の国家戦略、「BT戦略本部」は科学技術の成果を実用化、事業化し、社会に導入するための国家戦略を作り執行する組織。守備範囲が違う。
 138のJABEX提言中、3割が「総合科学技術会議」、7割が「BT戦略本部」にかかわる課題。例えば、「総合科学技術会議」はR&D政策、産学連携政策などが中心であり、「BT戦略本部」は、医療制度、保険制度、薬事審査体制、安全政策、農業政策、教育、国民理解、政府調達、産業化支援税制、雇用政策、実用化段階における倫理・遺伝子情報管理問題、地方を含めた各省連携体制(バイオマス利用、バイオクラスター)など、規制・制度改革、産業政策、社会基盤整備などが中心になる。従って、「屋上屋」「相互に競合」することは無い。勿論、両者は密接に連携し、整合性を確保すべきことは言うまでも無い。

(質問2)

新たな組織を作ることは行革に逆行するのではないか。

(答え)

 木を見て、森を見ない議論。そもそも行革は何のためにするかという本質に戻るべき。行革の名のもとに、日本の将来基盤を築くために本当に必要な、わずかな人数の組織すら作らないとしたら本末転倒。
 むしろ、BT戦略本部は、内容からすれば、むしろ行革推進に貢献する組織と位置付けられるべき。必要な事務局人員は産業界から出しても良い。

以上

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