バイオインダストリーの発展を産官学で総合的に推進する機関

新潟県知事 泉田 裕彦 様
貴県において昨年12月から本年1月にかけて意見募集された「遺伝子組換え作物の栽培に関する条例(素案)骨子」に対して、弊会議より私どもの意見を提出致しましたが、この度の「遺伝子組換え作物の栽培基準(案)」につきましても、以下の通り意見をまとめましたので、宜しくご考慮下さいますようお願い致します。
1.1ページ2項「隔離距離による交雑防止措置」、3項「隔離距離によらない交雑防止措置」について
遺伝子組換え作物の人の健康と環境への安全性についてはご存知の通り、わが国では政府により食品、飼料、生物多様性の環境の面からそれぞれについて科学的に厳格な評価が行われています。一般商業栽培される遺伝子組換え作物については、こうした体制・制度の下で全ての安全性承認の得られたものです。本栽培基準(案)では、国により全ての安全承認がされた遺伝子組換え作物と全ては承認されていない遺伝子組換え作物が同一に扱われています。このような扱いは、科学的合理性を欠くと共に社会に対して遺伝子組換え作物の安全性について誤った認識をもたらすものと考えます。安全承認されたものと未承認のものとは、以下の通り別々に基準を考えることが適切であると考えます。
国から一般商業栽培の承認がされている遺伝子組換え作物については、本栽培基準(案)における交雑防止措置の対象外とすることが適切であると考えます。一般商業栽培される遺伝子組換え作物については、国により食品、飼料、生物多様性の環境の面から安全性承認の得られたものであり、本来、法的規制を受けることなく自由に栽培できます。
交雑防止措置を定める対象は、国により安全性の確認されていない遺伝子組換え作物の試験栽培などに限定することが適切であると考えます。国から一般商業栽培が承認された遺伝子組換え作物については、その交雑・混入防止措置は隔離距離だけでなく、その他の防止措置についても、一般作物の品種・ブランドにおける交雑・混入防止と同様の対応、現在行われている遺伝子組換え作物分別流通における通常のルールによる対応で充分と考えます。
過剰に規制することは、農業者の栽培の自由と国際的に作付けされている安全で高機能な作物の栽培とを制限することになり、関係者に過剰負担を強いるばかりでなく、いたずらに不安を煽ることになります。
本栽培基準(案)では、安全性の承認されていない遺伝子組換え作物の栽培のみを対象にすることが適切であると考えます。しかしながら、安全性が全ては承認されていない遺伝子組換え作物の開放系における試験栽培などについては、既に農林水産省が定めた「第一種使用規程承認組換え作物栽培実験指針」において、栽培基準が示されています。この実験指針は、各分野の専門家から成る検討委員会で、交雑混入の回避を前提に、最新の科学的知見を反映した全国共通の基準として制定されたものと承知しています。
しかし、本栽培基準(案)における隔離距離は、この実験指針の2倍程度が示されています。また、イネについては、隔離距離以外の措置も要求されています。本栽培基準(案)においても、交雑防止のための隔離距離等の交雑防止措置については、国のこの実験指針に準ずることが適当であると考えます。
充分な科学的根拠や検討なしに、過度の基準を設けることは、いたずらに二重基準の混乱を招き、不安を煽るものであると危惧します。
2.全般について
貴県のみならずわが国にとって極めて重要な基幹産業である農業と食品産業において、バイオテクノロジーを活用した高度化、国際競争力強化は国民全体にとって重要な意味をもっています。こうした技術の産物を過剰に規制することは、将来が期待される植物バイオ研究、農業技術・研究開発全体の国際的な遅れをもたらすことが危惧されます。今後バイオテクノロジーにより栄養機能、アレルギー低減、耐寒性などを付与された作物からの消費者、生産者が得られるはずの利益を損なうことになるかもしれません。さらに、将来の日本の農業・食品産業全体の発展、ひいてはわが国の食糧問題、地域経済問題にも悪影響を及ぼすと考えます。
行政としては、適切な情報提供はもとより、リスクコミュニケーションなど一般市民の理解促進活動を積極的に行うことが、まず最初に必要と考えます。国により安全性が承認されている遺伝子組換え作物につきましては、栽培が制約されないよう重ねて慎重な対応をお願い致します。