2020 VOL.78 NO.3

更新日:2020年5月27日

巻頭言

◆競争と共生(久保庭 均)

総説

◆ケトン体生成を促す食事療法による体脂肪減少メカニズム(渡辺啓太・向山広美・宮本潤基・木村郁夫)

要旨
 健康志向の高まりにより、食の重要性が再認識され始めている今日、ケトン食や断続的断食などの食事療法による効率的な体脂肪重量の減少が注目されている。減量作用の実質的な分子実体としては、これら食事療法によって肝臓から産生されるケトン体(アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンの総称)であることが示唆されているが、そのメカニズムの解明には至っていない。近年の細胞膜上受容体の発見により、ケトン体に対する受容体が同定され、ケトン体が単なるグルコースの代替エネルギー源としてだけでなく、シグナル分子として機能することが明らかとなった。ケトン体とその受容体を介した分子栄養メカニズムの解明により、栄養管理による先制医療や予防医学への応用が期待される。

◆脳や脊髄などの中枢神経疾患に対する再生医療・細胞治療の現状と課題(川堀真人)

要旨
 いったん障害を受けると回復することがないと言われてきた脳・脊髄の病気に対する再生医療の期待は大きい。脳梗塞・頭部外傷・脊髄損傷・パーキンソン病などに対する細胞治療が、「基礎研究」の段階から臨床応用に向けた「治験」、さらに一部は「保険診療」の段階に入ってきている。2019年には、自家骨髄由来幹細胞の「ステミラック注」が脊髄損傷の亜急性期患者に対して期限付き・条件付き承認下で保険適応となり、中枢神経疾患に対する初めての「再生医療等製品」となった。脳梗塞に対しても複数の治験が進行中で、その結果が待たれる。本稿では、幹細胞の作用機序、基礎・臨床研究の進捗状況、残された科学的・産業的課題について概説する。

解説

◆γ-グルタミルトランスペプチダーゼ: 立体構造と産業応用(和田 啓・渡辺文太・鈴木秀之・福山恵一)

要旨
 γ-Glutamyltranspeptidase(GGT)はグルタチオンなどのγ-グルタミル化合物を基質とする酵素である。本稿ではGGTの立体構造解析により明らかにした反応機構と翻訳後の成熟化機構を概説し、本酵素の産業応用の可能性について紹介する。

◆焼酎麴菌のクエン酸高生産機構(二神泰基・門岡千尋)

要旨
焼酎の製造やクエン酸の発酵工業には、クエン酸を高分泌生産するAspergillus属糸状菌が用いられている。本稿では、これらの糸状菌がクエン酸を分泌生産するために不可欠なクエン酸輸送体について解説する。

◆エンドグリコシダーゼを用いたバイオ医薬品糖タンパク質の糖鎖改変技術(竹川 薫・樋口裕次郎)

要旨
バイオ医薬品のうち、CHO細胞などで生産される糖タンパク質医薬品には、糖鎖の不均一性に起因する様々な問題が生じる。糖鎖修飾はタンパク質の機能制御に大きく影響するため、バイオ医薬品には薬効が高く副作用の少ない均一糖鎖が付加されることが望まれている。現時点では、均一糖鎖を有するバイオ医薬品を生産するための最良の方法として、糖鎖を切断したタンパク質へ、構造が均一な合成N-結合型糖鎖をエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)が有する糖鎖転移活性を用いて結合させる方法が良いと考える。本稿では、ENGaseの糖転移活性を用いた均一糖鎖含有タンパク質生産に関する、現状と問題点について紹介したい。

トピックス

◆酵母の窒素代謝制御遺伝子破壊株におけるイソブタノール耐性・生産能の向上(黒田浩一)

◆窒素固定細菌が共生するマメ科植物根粒の形成制御機構(征矢野 敬)

◆空腹によって味覚を変化させる脳内の神経ネットワーク(中島健一朗)

◆タイトジャンクションを通る薬物送達法の開発に向けて(中村 駿・入江克雅)

◆プロポリスの生理活性物質アルテピリンC合成系の酵母内再構築(棟方涼介・矢崎一史)

◆イメージング質量分析による核酸医薬の体内動態解析(横井宏之・鎌田春彦)

◆歯周病菌感染がマクロファージにおけるアミロイドβの産生を引き起こす可能性(武 洲)

◆ユニークなグラム陰性菌由来のbd型酸化酵素の精密立体構造(坂本順司)

◆α-ケト酸の電気化学的還元による効率的アミノ酸合成法(福嶋 貴・山内美穂)

◆クロマチン修飾を介して植物の分化細胞を幹細胞化する新規転写因子STEMIN(石川雅樹)

バイオの窓

◆コンプライアンスと生物多様性(本田真也)

機構紹介

◆深海バイオリソースの外部提供事業(布浦拓郎・出口 茂)

産業と行政

◆「くすりのシリコンバレーTOYAMA」創造コンソーシアムのご紹介 ~世界に羽ばたく「薬都とやま」の実現に向けて!~(石田美樹)

【お詫び】p.247 左1行目のお名前に誤りがございました。正しくは、森 俊介 様 です。申し訳ございませんでした。

◆神奈川県庁インタビュー 未病、そして未病改善 ─神奈川県の挑戦─

◆Axcelead社池浦社長インタビュー ─創薬エコシステムの構築に向けたAxcelead社の取組み─

地域産業支援機関の活動⑧
◆バイオクラスター形成に向けた鶴岡市の取組みについて

特集

NEDOスマートセルプロジェクト

タンパク質・酵素開発
◆分子動力学シミュレーションによるタンパク質高機能化(亀田倫史)

我が国養殖業の持続可能な展開に向けて

◆我が国養殖業の構築に向けた政策展開 ─養殖業成長産業化総合戦略─(藤田仁司)

糖鎖研究から創薬への挑戦

◆グライコプロテオミクス技術の開発と創薬標的探索への応用(梶 裕之)

JBAニュース

バイオエンジニアリング研究会 2019年度公開講演会
◆「AI型バイオエンジニアリング~AI の関わる社会進化論 ~日本が世界で生き残るためのキーテクノロジーを考える」(加藤宏明)

アルコール・バイオマス研究会 シンポジウム
◆「バイオマスの利活用を基盤とした循環型社会の形成を目指して ~地方自治体と企業の先駆的な取組み~」

JBA研究会紹介
◆アルコール・バイオマス研究会

JBA研究会紹介
◆植物バイオ研究会

バックナンバーへ戻る