2025 VOL.83 NO.6

巻頭言

・バイオエコノミーに資する人財育成への期待(竹山 春子)

目で見るバイオ

・酒造用米中の脂質と無機元素の分布を見る(玉田 佳大・浅井 拓也・明石 貴裕・新間 秀一 )

総説

・糸状菌の細胞表層界面活性タンパク質ハイドロフォビンの諸性質と応用(阿部 敬悦・田中 拓末・寺内 裕貴・高橋 尚央)

要旨
糸状菌は陸圏において多様な固体表面に生育し、固体高分子を分解することで地球の物質循環に寄与する。糸状菌の陸圏における生育では、細胞が固体表面と空気相に接することから細胞表層が疎水化されている。細胞表層の疎水化は、糸状菌が分泌生産する界面活性タンパク質ハイドロフォビン(HP)が細胞を被覆することでおきる。HP は固体高分子の分解促進や動植物感染など、糸状菌の示す多様な生物現象に関与している。本稿ではHP の物理化学的特性に由来する生物学的機能と糸状菌の生物現象の関係性に関して解説し、HP 特有の特性に基づく化成品としての利活用の可能性に関しても述べる。

解説

・ヒト小腸オルガノイド低コスト培養法の確立と食品科学研究への応用(高橋 裕・佐藤 隆一郎)

要旨
オルガノイドは従来モデルよりも高い生理機能をもつが、その高い培養コストが汎用利用の課題となっている。本稿では、ヒト小腸オルガノイドの培養コスト削減に関する技術と、それを基にした化合物探索の実施例を紹介する。

・リサイクル可能な海洋生分解性のプラスチック代替透明板紙の開発(磯部 紀之)

要旨
海洋プラスチック汚染を解決しうる、セルロース由来の透明な板紙について紹介する。透明な板紙は透明性・強度・耐水性・成形性を備え、完全閉鎖型の工程で製造でき、深海を含む海洋環境で分解される「海にやさしい」新素材である。

・海中のリンをため込む有孔虫(野牧 秀隆・石谷 佳之・岡田 賢)

要旨
海洋の窒素やリン循環に、単細胞の真核生物「有孔虫」が重要な役割を果たすことがわかってきた。有孔虫が窒素やリンをため込む理由、そしてその行く末について解説するとともに、応用研究の可能性についても述べる。

トピックス

・臨床応用に向けた誘導型制御性T 細胞の機能安定化に重要な因子(木林 達也・チャン ケルビン イジン・坂口 志文)

・酒造用玄米と米麴の質量分析イメージング(玉田 佳大・浅井 拓也・明石 貴裕・新間 秀一)

・アミノ酸バランスの攪乱による膠芽腫治療(平尾 敦)

・放線菌における新規メチオニン生合成経路の発見(長谷部 文人)

・アブラナ科植物の開花を遅延させる新規低分子化合物(大塚 菜那・佐藤 綾人・白川 一・伊藤 寿朗)

・RNA-タンパク質複合体の人工進化と高性能リボスイッチへの応用(福永 圭佑・寺本 岳大)

・植物内生糸状菌を「病原菌」にする転写因子の発見(氏松 蓮・晝間 敬)

・植物の種子形成に不可欠な"へその緒"的新組織の発見(笠原 竜四郎)

・頬粘膜の遺伝子変異データを利用した食道がん予測モデル(横山 顕礼・垣内 伸之)

・巧みな官能基変換による放線菌メロテルペノイドの生合成戦略(野口 智弘・葛山 智久)

バイオの窓

・温故知新(村島 弘一郎)

産業と行政

バイオものづくりプロジェクト(15)
・サステナブルな食の未来の実現に向けた油脂酵母を用いた持続可能な油脂生産技術の構築(柴田 雅之・荒 学志・高久 洋暁)

・Bioeconomy Hub Japan 2025 開催報告(高田 清文)

特集

この素材!この技術!が世の流れを変えた!
・大麦・ホップ育種によるビール製品のおいしさの追及(鯉江 弘一朗・時園 佳朗・柴村 明宏・久慈 正義)

・第9 回バイオインダストリー大賞 受賞者インタビュー

・第9 回バイオインダストリー奨励賞 12 人のメッセージ

・バイオインダストリー大賞・奨励賞 選考委員長メッセージ

JBAニュース

・BIO Asia-Taiwan 2025 参加報告

・BIO International Convention 2025 Boston 参加報告

・バイオリーダーズ研修2025

・会員の動き

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