第2回バイオインダストリー奨励賞受賞者の紹介

大賞・奨励賞

更新日:2018年12月 5日

award_logo_shoreiJE.jpgのサムネイル画像2017年より創設された「バイオインダストリー奨励賞」は、バイオサイエンス、バイオテクノロジーに関連する応用を指向した研究に携わる有望な若手研究者とその業績を表彰するものです。東京大学大学院特任教授 阿部啓子氏を選考委員長とする22名の選考委員からなる選考委員会は、56件の応募の中から厳正な審査を経て、以下の10人の受賞者を決定しました。

奨励賞受賞者10 人から受賞内容とメッセージをいただきました

1.kishino_photo.jpg岸野重信 氏 京都大学大学院 農学研究科
「腸内細菌の脂質代謝解析に基づく新規機能性脂質の創出」

この度はバイオインダストリー奨励賞にご選出いただき、心より御礼申し上げます。またご指導いただいております先生方、共同研究者の皆様方に深く感謝いたします。私は、微生物を活用したものづくりをモットーに様々な研究を行なっております。本研究では、腸内細菌の一種である乳酸菌が新規な脂質代謝を有することを見いだし、詳細な解析により本代謝の全貌を明らかにしました。さらに、乳酸菌由来酵素を活用して修飾脂肪酸ライブラリーを構築し、いくつかの修飾脂肪酸が生理機能を示すことを明らかにしました。今後、食品分野のみならず、医薬品、化成品分野へ応用し新規機能性素材の開発を目指します。

2. kunisawa_photo.jpg國澤 純 氏 (国研)医薬基盤・健康・栄養研究所
「腸を起点に形成される免疫環境の理解とヘルスケアへの新展開」

この度はバイオインダストリー奨励賞を賜り、大変光栄に存じます。選考委員の先生方、指導して下さった先生方、ともに頑張ってくれた研究室の仲間、日々サポートしてくれている家族に心より御礼申し上げます。 私は腸管に存在する免疫システムに焦点をあて、特に食品由来成分や腸内細菌の関与を研究しています。その中で油やビタミンの免疫制御機能とアレルギー炎症性疾患に与える影響について解明しました。現在は創薬・機能性食品開発への展開やコホートから得られたビッグデータを用いる新しい健康科学研究への挑戦を行っています。今後もご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

3.takayama_photo.jpg高山和雄 氏 大阪大学大学院 薬学研究科
「ヒト多能性幹細胞由来肝細胞と小腸細胞の作製と創薬応用」

ヒトES/iPS細胞から作製した肝細胞や小腸細胞は、創薬への応用が期待されています。本研究では、遺伝子導入技術や三次元培養技術などを駆使し、ヒトES/iPS細胞から肝細胞や小腸細胞への高効率な分化誘導法を開発しました。作製した肝細胞は毒性スクリーニング、作製した小腸細胞は薬物代謝試験や薬物輸送試験に応用できることを明らかにしてきました。ヒトES/iPS細胞由来肝細胞や小腸細胞を用いた創薬試験法がさらに発展し、より安全で効果的な医薬品の開発に貢献できることを期待します。最後になりましたが、本研究を遂行するにあたってご指導・ご支援頂きましたすべての皆様に深く感謝申し上げます。

4.tateno_photo2.png舘野浩章 氏 (国研)産業技術総合研究所 創薬基盤研究部門
「糖鎖プロファイリング技術の開発と再生医療・創薬への応用」

糖鎖は全ての細胞の最外層に位置し、細胞-細胞間クロストークが織りなす高次生命現象の「起点」として機能します。レクチンを用いた糖鎖プロファイリング技術を用いると、細胞や組織などの生体試料を迅速簡便に解析することができます。私はまず、本技術を用いてヒトES/iPS細胞の顔である糖鎖の特徴を明らかにしました。次にレクチンを用いてヒトES/iPS細胞の品質を管理する新たな技術を開発、実用化しました。糖鎖はあらゆる生命現象のカギを握るとともに、その制御や利用は革新的な医療技術の開発につながります。各種分野の先生方や企業と協力して、世界をアッと言わせる技術を開発していきたいと思っています。

5.tsuji_photo.jpg辻 雅晴 氏 情報・システム研究機構国立極地研究所
「南極産菌類を利用した酪農排水処理技術の開発と酒類醸造への展開」

乳脂肪は低温ではバターのように凝固することから、微生物による分解が最も難しい物質の1つとして知られています。私は南極域から低温下で高い脂質分解能力を有する菌類を発見し、この特徴を、乳脂肪を含む酪農施設排水処理に応用しました。この技術は特許登録され、本特許に基づく排水処理技術が、民間企業により実用化されています。さらに南極酵母が有するエタノール発酵能についても特許登録を行い、この特徴を酒類へ利用することを検討しています。 今回、バイオインダストリー奨励賞をいただくことができ、とても光栄です。今後も南極観測の研究成果を社会に還元することを目指し、研究を進めていきたいと考えています。

6.hirota_photo.jpg廣田隆一 氏 広島大学大学院 先端物質科学研究科
「リン代謝経路のデザインによる遺伝子組換え生物のバイオセーフティ技術開発」

この度はバイオインダストリー奨励賞をいただき心より感謝申し上げます。リンはあらゆる生物が生きていくために必要とする重要な元素です。バクテリアが有する多様なリンの代謝について研究を進めていく中で、特殊なリンを利用する代謝経路が、遺伝子組換え体を含む生物の生存をコントロールするテクノロジーとして利用できる可能性を見いだしました。遺伝子組換え体の安全性を確保する技術は、バイオテクノロジーの産業利用においてこれからますます重要になることが予想されますが、今回の受賞を励みに、より一層研究に精進したいと思います。ご指導いただいた先生方、ともに研究を進めてくれた研究員や学生の皆さんに感謝申し上げます。

7.matsumotoA_photo2.jpg松元 亮 氏 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
「"エレクトロニクスフリー"で完全合成型の人工膵臓の開発」

ボロン酸は多様な生体分子と相互作用し、その選択性は合成化学的に可変です。糖との結合性から「ボロノ・レクチン」とも呼ばれます。ある局面ではリボースを至適に安定化することから、これを生命起源説の1つである「RNAワールド仮説」の支持根拠とする説もあります。生体分子と絶妙の親和性で関わり動的機能を生み出す「ボロン酸工学」の可能性を強く感じています。この度は、特に注力しているボロン酸ゲルを用いた人工膵臓に関する研究成果に対してバイオインダストリー奨励賞受賞の栄誉にあずかりました。関係の皆様に深く感謝申し上げるとともに、「貼るだけ"人工膵臓"」の社会実装へ向けた研究を着実に展開していく所存です。

8.matsumotoK_photo2.jpg松本謙一郎 氏 北海道大学大学院 工学研究院 応用化学部門
「配列制御型ポリエステル生合成系の開発」

ポリヒドロキシアルカン酸は、細菌によって合成されるポリエステルで、プラスチックとして利用できます。本ポリマーに関しては、非常に多くの研究が積み上げられており、近年は人工的な構造を持つポリマーの合成も可能になってきましたが、ポリマー分子鎖中のモノマー配列の制御については確認できた例はありませんでした。今回奨励賞をいただいた研究内容は、特殊なポリエステル合成系を用いることで、2種類のモノマー前駆体の混合物から、秩序のある配列構造を持つポリマーが自発的に合成されることを発見したものです。現在は、この現象を利用して有用な材料を作りだすこと、また、モノマーの配列制御が起こる仕組みの解明に取り組んでいます。

9.yoshida_photo2.jpg吉田聡子 氏 奈良先端科学技術大学院大学
「ハマウツボ科寄生植物の寄生分子機構解明のための研究基盤の構築」

この度はバイオインダストリー奨励賞を受賞させていただき、大変光栄に存じます。ハマウツボ科の寄生植物は、農業作物に寄生しその収量を減らすため、世界的に大きな問題となっています。しかし、寄生植物の寄生の分子機構はこれまであまり解析されてきませんでした。本研究では、寄生雑草のストライガと日本に自生する条件的寄生植物のコシオガマを用いて、植物寄生の分子メカニズムの解析基盤を確立しました。少しずつではありますが、寄生の遺伝的プログラムが明らかになり、寄生を制御する薬剤の発見などにつながってきています。この賞を励みとして、寄生雑草の防除につながる発見をしていけたらと思います。

10.yoshino_photo2.jpg吉野知子 氏 東京農工大学大学院 工学研究院
「がんゲノム医療に向けた単一細胞解析システムの構築」

血中循環腫瘍細胞(CTC)は、がん患者の血液中を循環するがん細胞であり、転移との関連が示唆されています。CTCの遺伝子情報を取得できれば、治療薬選択や治療効果のモニタリング等、がん医療への貢献が期待できます。一方で、CTCは約50億の血球細胞に対し、10個程度しか存在しない希少な細胞であるため、その解析が困難です。本研究では、血液から確実にCTCを回収し、遺伝子解析が可能な単一細胞解析システムを構築しました。さらに臨床試験における本システムの有効性を確認しております。この度の受賞に際しまして、本研究をご指導、ご協力、ご支援いただきましたすべての方に心より感謝申し上げます。

■第2回バイオインダストリー大賞受賞、富山県薬事総合研究開発センター 髙津 聖志 所長 インタビューはこちら

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