【報告】2018年度 JBA知的財産委員会報告会(開催概要)

知財 講演会・セミナー

更新日:2019年6月 5日

開催日時 2019年3月28日(金) 15:00~18:15
開催場所 (一財)バイオインダストリー協会
出席者 34名
主催 (一財)バイオインダストリー協会
共催 知的財産戦略ネットワーク(株)(IPSN)、日本バイオ産業人会議(JABEX)

ワーキンググループ(WG)報告

[1]AI利用の協業における、製薬企業のユーザーとしての利用条件のあり方と課題

 古高 秀一 氏(産学連携と知的財産権WGリーダー/日本たばこ産業(株) 医薬総合研究所 知的財産部 マネージャー)
IMG_8442.jpg バイオテクノロジー関連企業がAI技術を活用する際はIT企業との協業が必須になると考えられる。それが製薬企業の場合、特に期待される成果や知的財産権はどのようなものになるか、経済産業省の「AI・データ利用に関する契約ガイドライン-AI編-」のモデル契約書に示されている、利用条件(A~C案、特にA案のケース1~3)に着目した検討を行った。利用条件は、ユーザーが提供する生データの品質、ベンダーが開発する学習済みモデルの汎用性、ユーザーが独占権にこだわるか、ユーザーが引き受けるコスト等によって左右されると考えられた。ユーザーとしては、成果物である学習用データセットや学習済みモデル自体よりもむしろ、モデルを利用し得られた成果こそが発明の手掛かりとなるので、自身やその関係者、また、他者が利用可能な範囲は、多様な選択肢を想定した中から判断するべきと考えられた。今後、具体的事例がさらに増えれば、より詳細な分析が行えるようになるだろう。
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[2] 近時の食品関連特許に係る判例の一考察

 若林 健司 氏(食品WGリーダー/(株)明治 研究本部 研究戦略統括部 特許部 特許グループ)
図1.jpg 近年、食品分野においても知財意識の啓蒙が進み、裁判例が急増してきている。サポート要件・実施可能要件が争点となった特許権侵害訴訟案件から、3件((1)「アルミ缶ワイン」事件、(2)「トマト含有飲料」事件、(3)「米糖化物含有食品」事件)をピックアップし、比較・考察を行った。「アルミ缶ワイン」事件では、発明特定事項の変数以外の要素の影響を考察しており、「米糖化物含有食品」事件では、実施例の官能評価の方法の客観性について言及しているが、いずれも「トマト含有飲料」事件の内容と関連しており、サポート要件の充足性を重視している。サポート要件を満たす重要事項としては、(a) パラメータ範囲特定の技術的意義、(b) パラメータ範囲と発明の効果との関係、(c) 一定水準を満たす評価試験結果の3つが考えられた。また権利者側の対応策としては、(a) 適切な発明課題の設定、(b) 適切な範囲のクレームの設定、(c) 上記(a)、 (b) を充分にサポートする実施例の記載が考えられた。
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講演

人工知能の医療・創薬への応用の現状と展望

 田中 博 氏(東北大学 特任教授 東北メディカル・メガバンク機構 機構長特別補佐、東京医科歯科大学 名誉教授・特任教授 医療データ科学推進室 室長)
190328_Prof_Tanaka.jpg 次世代シーケンサーの急激な発展、バイオバンクの普及、ウェアラブルセンサーによる連続計測、これらの技術的な実現からビッグデータ医療の時代が始まった。本講演では、国際的に先行するビッグデータ医療の主要な流れとして、アメリカの「治療医学」のレベル・質向上を目指す臨床実装の推進、欧州の「予防医学」のレベル・質向上を目指すバイオバンクの推進、第3の流れとして「情報による治療」を行うモバイルヘルスについて具体的事例に照らした説明がなされた。これらの流れが、21世紀医療のパラダイム変換を起こし、「個別化医療」、「先制医療」という2つの概念を提示した。現在、医療や創薬へDeep Learning を応用するAI医療、AI創薬研究が盛んに行われており、既に医用画像の理解や診断、クリティカルパスや薬物治療計画の立案、標的分子のバーチャルスクリーニングや化合物自動設計等に確実な成果を上げていることが紹介された。最後に、ヒトとAIの共創的な知が、これからの人類の進むべき途を探索し、新しい医学の展望を拓くことに言及され、非常に熱のある知的刺激に富んだ講演だった。
 ■配布資料【会員限定】こちら(PDF:7.5MB)

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