JBAについて

会長挨拶

産学を つないで育む バイオの未来

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阿部啓子先生の後を受け、2023年7月よりバイオインダストリー協会会長を拝命しました吉田稔です。バイオエコノミーは、地球規模の課題や少子高齢化などの解決に向けて社会の変革をもたらし、未来社会(Society 5.0)を実現する上できわめて重要です。わが国のバイオエコノミーを支える本会を発展させるため、微力ながら尽力するつもりです。どうぞよろしくお願いいたします。 

さて、わが国は伝統的な醸造発酵技術を基盤としながら1970年代に勃興したバイオテクノロジーをすぐさま取り入れ、産学が連携して医薬、食品、化成品、エネルギー、環境などさまざまな分野で成果を挙げてきました。私も1981年から東京大学農学部の醗酵学研究室(別府輝彦教授・令和4年度文化勲章)で過ごしましたが、当時は多くの企業研究者が研究生として参加し、単に先端技術の習得というだけでなく、企業の応用研究から生まれた新たなテーマに取り組んでいました。その中から基礎的に重要な発見がいくつも出てきたのです。私自身も製薬企業で発見された化合物の共同研究からエピジェネティクスやスプライシングの新しいメカニズムを明らかにすることができました。当時の別府教授の「画期的な基礎研究は応用研究から生まれる」という言葉を実感したものです。つまり、この頃の産学連携は、双方向の流れで進められ、学術(基礎)、産業(応用)のどちらにとっても重要でした。 

バイオ研究が成熟してきた今日の産学連携は、学界のシーズと産業界のニーズのマッチングに力点が置かれるようになりました。BioJapanをはじめ、本会の活動はその素晴らしい機会を提供しています。しかし、応用から画期的な基礎研究が生まれることを考えれば、既存シーズのマッチングだけではなく、産学がともに未来のシーズを生み出し社会実装につなげるような連携も大いに期待されます。本会の活動を通じて日本のバイオ産業がさらに発展するよう祈念しております。

一般財団法人バイオインダストリー協会
代表理事 会長  吉田 稔