NEDOスマートセルプロジェクト技術セミナー 要旨集
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ことで計算の高速化が可能となり、本手法を実現することができた。以上のように、実験データ取得と情報解析を密に連携させることで、これまでにない新しいコドン最適化手法の開発に成功した。 本手法の有効性を検証するために、12個の遺伝子について配列設計を行い、ロドコッカス属放線菌に導入してタンパク質生産量を評価した。各遺伝子について、CAIの閾値設定を様々に変えて、タンパク質生産量を向上させる配列6種類、低下させる配列3種類を設計し、野生型配列9と比較する実験を3回ずつ実施するという大規模な検証を行った(12遺伝子×10配列×3回=360実験)。その結果、9個の遺伝子(75%)で野生型配列よりも生産量を向上することに成功し、さらにCAIの最適な閾値設定についても明らかになった(図2)。特に、野生型配列でのタンパク質生産量が少なかった5個の遺伝子については、全てにおいて配列設計による生産量の改善が見られた(図3)。この結果は、本手法が生産の難しいタンパク質に対して特に有効であることを示している。また、タンパク質生産量の低下については、12個の遺伝子全てについて期待通りの結果が得られた。また、本手法のもう1つの利点として、設計される配列が野生型配列に対して先頭部分のみに変異を含むことが挙げられる(図1)。これにより、設計配列を合成する際には、全長遺伝子合成のようなコストの高い方法ではなく、変異導入プライマーによるPCRのみで可能な非常に簡便で安価な方法を用いることができる。さらに、本手法はCAIを対象の微生物に合わせることで、ロドコッカス属以外の様々な微生物にも適用することができる。図2.遺伝子配列設計によるタンパク質生産量向上の有効性検証図3.野生型配列でのタンパク質生産量が少ない遺伝子の配列設計による改善例参考文献1) Saito, Y. et al.,Sci. Rep.,9(1),8338 (2019)11

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