NEDOスマートセルプロジェクト技術セミナー 要旨集
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長鎖DNA合成 柘植 謙爾 神戸大学科学技術イノベーション研究科 特命准教授 【連絡先】E-mail: ktsuge@port.kobe-u.ac.jp1.スマートセルプロジェクトと長鎖DNA合成 新規代謝物質を大腸菌や酵母などの宿主細胞に生産させるようなスマートセル開発においては、10個を超えるような多数の遺伝子を導入する必要があることは珍しいことではない。従来は、これらの遺伝子を1つずつ細胞に導入する必要があったが、(1)遺伝子の数だけ形質転換を行う必要があり、時間が非常にかかる、(2)遺伝子の数だけ選択マーカー遺伝子が必要となる、(3)遺伝子の数だけ遺伝子を導入する場所が必要となる、(4)遺伝子を導入する順番により致死性中間代謝産物が蓄積し生存できない場合がある、などの問題があった。長鎖DNAは、これらの遺伝子断片を1つのDNAにつなげることで遺伝子導入における、時間コスト、金銭コストの削減が可能とする画期的技術である。しかしながら、長鎖DNAはその配列デザインにおいて考慮すべきパラメーターが短いDNAに比較して増加し、パラメーターの組み合わせは莫大なものとなるため、1回の長鎖DNAの配列デザインで、例えば生産量などにおいて満足のいく結果が得られる可能性は残念ながら高くないという欠点がある。そこで、スマートセルプロジェクトでは、DBTL (Design(設計)-Build(構築)- Test(評価)-Learn(学習)) サイクル(図1)という、試行錯誤のサイクルを繰り返しながら徐々に長鎖DNAの配列デザインを改良していく戦略をとっている。Buildは、Designで得られた配列を設計通りに実物の長鎖DNAに変換するステップである。Buildは、従来、月スケールの時間を要するDBTLサイクルの律速段階となっており、長鎖DNA合成のスピードアップのために、必要な工程を1か所に集約したバイオファウンドリーの整備を行った(図2)1)。 図1. DBTLサイクル 図2. 神戸大学内に構築した長鎖DNA合成ファウンドリー 6

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