NEDOスマートセルプロジェクト技術セミナー 要旨集
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スマートセル設計システムの概要 油谷幸代国立研究開発法人産業技術総合研究所生体システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリ副ラボ長【連絡先】 E-mail: s.aburatani@aist.go.jp 近年、ゲノム編集技術をはじめとした各種バイオテクノロジー技術の進展により、生体細胞を用いた「バイオものづくり」の分野の世界的競争が激化している。本分野は、欧米諸国が先行しており、基本的には合成生物学を基盤とし、大量データから機械学習等を用いた改変候補遺伝子の同定を行い、その情報を元に宿主細胞の遺伝子改変を実施することで効率的な物質生産株の作成を行っている。本プロジェクトでは、これらの概念を基盤に日本における「モノづくり産業」を活性化させるための技術基盤の構築と実証を行っている。 欧米で先行している宿主細胞改変にて利用されている情報科学技術は、基本的に機械学習を基盤としている。この技術の長所は、大量データ(数万~数十万サンプル)がある場合は高精度のルール抽出が可能になるとともに、時間経過とともにデータ数が増えれば増えるほどその精度はより高くなることが挙げられる。その一方で、一定の精度を出すためには宿主細胞および生産物質毎に数万サンプル程度の大量データを必要とするため、コスト的な面で負荷がかかる点が懸念される。現時点において、本分野で後塵を拝している我が国がこれらの先行国との国際競争を対等に行うためには、機械学習のみを利用した時の短所である「大量データ」と「宿主依存型」の2点を解消することが必須である。そこで本プロジェクトでは、「スマートセル=高度に合理化され人為的に設計された高機能な物質生産能力を有する生体細胞」を構築するために、我が国独自の情報解析技術や優位に立っている情報生物学的手法を統合的に組み合わせることで、①現実的なデータ数(最小100サンプル程度)で、②より正確で、③汎用的に利用可能なスマートセル設計システムを開発している。 本システム開発にあたり、生産現場での課題と情報解析による解決法・アプローチの関連性を示したものが図1である。左に生産現場における各種課題を記載している。まず、これらの課題をスマートセルという新概念の生体細胞で実現するために課題を4つに大別した。この4課題を解決する情報解析手法として下記の情報解析技術の開発を行っている。 9

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