NEDOスマートセルプロジェクト技術セミナー 要旨集
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スマートセル開発に資する ハイスループット微生物構築・評価技術の概要 蓮沼 誠久 神戸大学先端バイオ工学研究センター センター長/教授 【連絡先】E-mail: hasunuma@port.kobe-u.ac.jp 近年、欧米のバイオベンチャーではバイオエコノミーの潮流の中で投資を集め、バイオおよびデジタルの要素技術を一箇所に集約し、かつ一体的に運用する研究開発拠点を整備することで研究開発の速度が著しく向上させている1)。具体的には、バイオ生産に資する細胞株の構築において、①バイオデータを利用して計算機内で組換え微生物の代謝等を設計するDesign工程、②カタログ化したDNAパーツとロボティクスを活用して多様な組換え微生物を短時間で構築するBuild工程、③目的物質の生産性を短時間で評価するTest工程、④評価結果と当初設計の差異を計算科学的に解析するLearn工程、を有機的に連携させることでDBTLとし、従来5~10年かかっていた開発期間を短縮させることに成功している。このような流れは欧米にとどまらず、中国をはじめとする諸国、アカデミアにも波及している2)。 本講ではBuild工程、Test工程の要素技術に目を向けるが、世界的には自動化技術の進展が著しい。従来の微生物育種(図1)では、微生物に導入するDNAを設計し、そのDNAを入手した後、プラスミド構築、形質転換、培養条件の検討、生産性評価を人間の手で行っていたのに対し、プラスミド構築から簡易的な生産性評価までを半自動で行うロボットが開発されてきている。 遺伝子工学による育種では、特定の遺伝子の発現量を、特定の時期に、特定の度合いで強化(あるいは抑制)する必要がある。これを実現するには遺伝子の発現調節に関与する分子を部品として手元に持っておく必要がある。この部品は例えばプロモーター、リプレッサー、RBS、ターミネーター等であるが、DNAパーツと総称されている。残念ながら、今日の分子生物学的知見ではDNAパーツの仕様は不明確であり、組合わせ方次第で遺伝子の発現量が変わるため、実験による試行錯誤が必要である。そこで、Amyris社やGingko Bioworks社等の米国企業ではカタログ化したDNAパーツとロボティクスを活用してバイオ操作を自動で行うラボオートメーションシステムを既に作り上げている。NEDOスマートセルプロジェクトでは、世界一高いDNA集積精度を有する長鎖DNA合成技術の図1.微生物育種スキームの概要 13

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