NEDOスマートセルプロジェクト技術セミナー 要旨集
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ハイスループット化や、長鎖DNAを利用して多様性を有する微生物を短時間で構築する技術、生産性データおよびオミクスデータを高精度かつハイスループットで取得する技術、といった独自ハイスループット技術の開発を進めてきた。長鎖DNAは一度の組換えで多数の遺伝子の発現を強化・抑制できるため、微生物の高速育種に極めて有用である。情報解析で設計された新規代謝経路を短期間で具現化することにもつながる。これまでの主な成果は以下の通りである。•30kb超のDNAの合成時間を従来の1/2以下(1ヶ月程度)に短縮する技術の確立(図2)•96穴プレートフォーマットの半自動ハイスループット形質転換技術の構築•画像解析等により目的物質の生産性をハイスループットに評価する技術の開発•自動前処理装置(図3)の開発等によるメタボローム解析のスループット10倍向上2019年度からは、長鎖DNA合成技術をスマートセル創出プラットフォーム(図1)に組み込んでいく。また、独自のハイスループット評価技術(メタボライトセンサ、化合物排出輸送体探索プラットフォーム、トランスクリプトーム解析、メタボローム解析、プロテオーム解析、自家蛍光顕微鏡観察)の高精度化を図り、情報解析技術との連携を強化して体系的なデータの取得・管理を行っていく。バイオ産業で求められる有用物質の多くは細胞内で共通の前駆体から生合成されているため、この前駆体を「ハブ化合物」とし、ハブ化合物の生産性が高い株を「シャーシ株」と定義した。ひとたびシャーシ株が開発できていると、これを宿主として目的生産株の育種期間を短縮することが可能なため、シャーシ株は産業界からのニーズが高い。従来、有用宿主の単離・育種に膨大な時間を要してきたが、本テーマでは長鎖DNAを用いた高効率な多重遺伝子導入・破壊技術や複数遺伝子の発現量最適化技術、半自動ハイスループット形質転換技術、ハイスループット評価技術を活用することで、シャーシ株ならびに実用株の開発期間を短縮できることを実証する。出芽酵母や大腸菌等の汎用微生物だけでなく、産業用微生物にも適用性を拡げ、民間企業が標的とする特定の生産物質で有効性を検証していく。参考文献1)蓮沼誠久ら,(バイオテクノロジーシリーズ)スマートセルインダストリー-微生物細胞を用いた物質生産の展望-(久原哲監修), p. 1-9, シーエムシー出版(2018)2)Hillson, N.et al.,Nat.Commun.,10, 2040 (2019)図2.一気通貫システムの開発による長鎖DNAの高速合成と低コスト化の実現 図3.メタボローム解析用 自動前処理システム 14

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