NEDOスマートセルプロジェクト技術セミナー 要旨集
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次に、東北大学でこれまでに独自に開発を進めてきた輸送体探索技術2)を適用し、産総研により抽出された輸送体遺伝子の機能を質量分析などの技術を用いて、実験的に調査し、ターゲット化合物を輸送する輸送体の探索を実施した。本プロジェクト内において、従来と比較して1/3~1/5の短期間にアミノ酸、有機酸(コウジ酸等)の輸送体の探索に成功した。さらに、探索した輸送体遺伝子の導入により、ターゲット化合物の生産が効率化できることを証明した。 膜輸送体は、生産物の排出だけではなく、基質の細胞内への取り込み、予期せぬ反応中間体・補酵素の細胞外への排出などにも関わることから、生物細胞を使って物質生産の効率化を実現する上で、膜輸送を制御するテクノロジー【輸送工学:トランスポートエンジニアリング】の確立は不可欠である。本研究の成果は、リポソーム再構成による輸送機能解析3) や、近年、技術の革新が著しいクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析、X線構造解析4) との協調により、輸送工学の確立に大きく貢献するものと確信している。 図2.プロジェクトの概要 参考文献 1) 七谷圭, 中山真由美, 新谷尚弘, 阿部敬悦, 第12章 微生物の膜輸送体探索と産業利用― 輸送工学の幕開け ―, (バイオテクノロジーシリーズ)スマートセルインダストリー -微生物細胞を用いた物質生産の展望-(久原哲 監修), p.226-230, シーエムシー出版 (2018) 2) 所定の化合物に対する膜タンパク質のスクリーニング方法及び所定の化合物の生産方法, 特願2018-087700, 2018年4月27日, 発明者 七谷圭, 阿部敬悦, 新谷尚弘, 米山裕, 中山真由美, 出願人 国立大学法人 東北大学 3) Sasahara, A., Nanatani, K., Enomoto, M., Kuwahara, S. and Abe, K., J. Biol. Chem., 286, 29044-29052 (2011) 4) 日高将文, 七谷圭, 第1部 農水産・製薬・生命・医療分野への応用, 放射利用の手引き, ㈱アグネ技術センター (2018) 16

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