NEDOスマートセルプロジェクト技術セミナー 要旨集
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スマートセル創製技術を駆使した 有用芳香族化合物生産菌の開発 乾 将行 公益財団法人地球環境産業技術研究機構 (RITE) バイオ研究グループ グループリーダー 主席研究員 【連絡先】E-mail: mmg-lab@rite.or.jp スマートセル創製技術を代表的な産業微生物であるコリネ型細菌に適用し、これまでに発酵生産が困難だった物質の生産株を従来よりも短い期間で育種開発することを目指した。同技術を駆使することで、生産困難なターゲット物質の1つである有用芳香族化合物の生産株構築と生産性の大幅な向上を達成したため、その成果について紹介する。RITEはこれまでにコリネ型細菌(Corynebacterium glutamicum)を活用した発酵生産技術の開発を行ってきた。今回、この菌を生産宿主とし、有用芳香族化合物の1つを生産ターゲットとして生産株の開発を進めた。この化合物は産業的な利用価値が高いものの、これまで生物を利用して高濃度生産された例はない。微生物全般に対して毒性を示すことと、糖からの代謝経路のステップ数が多く複雑なことがその原因だと考えられる。また、コリネ型細菌は元々この目的芳香族化合物の生産経路を持たない。そこで、本プロジェクトにおいて複数のスマートセル創製技術を駆使することにより、高生産株の短期間育種を試みた。各技術が提案する代謝改変指針に基づきコリネ型細菌の育種を進めたところ、目的芳香族化合物の大幅な生産性向上を確認した。現時点では未適用のスマートセル創製技術においても改善を示唆する予備検討結果を得ているため、さらなる生産性の向上が期待できる。また、特筆すべき点として、各スマートセル創製技術は併用可能であることが挙げられる。それぞれ代謝改変指針を導き出すアプローチが全く異なるため、生産株育種の過程で各技術の成果を1つの生産株系列に積み重ねることが可能である。これにより下図に示したように野生株から順次生産性が大きく向上していく成果を得た。本講演では各スマートセル創製技術を適用した結果と今後の展開について紹介する。 7

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