現在、欧米と日本が中心となって最新の遺伝子研究データを引き出せるDNAデータバンクの整備が進められています。
日本でもヨーロッパやアメリカと提携したデータバンクができており、遺伝子研究に大いに役立てられています。またこの運用の際のプライバシー保護のあり方についても議論が進められています。

遺伝子の“図書館”ができる
 遺伝子やDNAの研究は世界各国・各所で行われています。しかし、研究対象となるデータが膨大な量にのぼるため、単独の研究機関だけでは、DNAの解明はなかなか進みません。このため研究機関同士の協力が必要不可欠になっています。
 こうした協力体制を整えるのに不可欠なシステムがDNAデータベースです。これは、遺伝子に関する情報を集めたいわば遺伝子の図書館であり、多くの人が遺伝子情報を活用できるしくみです。
 このDNAデータベースがもっと広く普及していけば、遺伝子研究がさらに進歩し、わたしたちが受ける医療のスタイルも大幅に変わっていくことでしょう。
 そして研究機関だけでなく、医療の現場である病院のパソコンから最新の研究成果が引き出せるようになれば、診断や治療も格段にスムーズに進むことになります。
 現在、遺伝子のさまざまな情報を集めたDNAデータベースが整備されています。

我が国のDNAデータバンク

日本DNAデータバンク 
ホームページ
http://www.ddbj.nig.ac.jp/
Welcome-j.html
 日本にはDDBJ*というDNAデータベースがあり、CIB-DDBJという機関が運営しています。
 CIB-DDBJは、ヨーロッパの EBI/EMBL、アメリカの NCBI/GenBankという2つのDNAデータベースと連携して国際的なネットワークを構築しており、世界中の最新の遺伝子研究成果が瞬時に手に入るようになっています。この国際的DNAデータベースは、3つの機関の名前を取って「DDBJ/EMBL/GenBank 国際塩基配列データベース」と呼ばれています。世界中の最新の研究成果が瞬時に参照できるので、その役割は急激に大きくなっていくと考えられます。
 現在はまだ医療の現場に遺伝子の情報を配信するという形ではなく、主に研究者同士のネットワークとして活用されています。
DNAデータベースの問題点
 イギリスの北西に位置する島国アイスランドでは、国が企業と組んで国民のDNAデータベースづくりを推進しています。アイスランド国民の大多数は、9世紀〜10世紀にこの島に渡ってきたバイキングの子孫のため、国民1人1人の遺伝子に大きな差が見られず、しかも家系図がよくわかっています。
 しかし、各個人ごとに体格も違えば持病も異なっています。つまり同じような遺伝子をもつ人々が同じ環境のなかで生活しても、やはり個人差は生まれます。その差を調べれば重要な遺伝子の違いが見つかるのではないかということで、大きな注目を浴びているのです。
 しかし、国民のプライバシーを国家と企業が管理するのは問題だとの意見も強く、大きな論争を巻き起こしました。

個人情報の保護が鍵に
 見知らぬだれかに勝手に自分の個人情報を見られたり、利用されたりするのは、けっして気持ちのいいことではありません。また危険でもあります。アイスランドでは、遺伝子情報の提供を拒否する権利を設けるなどの対策をとっています。しかし、自分から申告しなければ遺伝子情報を自動的に使われてしまうため、まだ反対意見も残っているようです。
 その他のDNAデータベースについても、個人遺伝子情報を提供した人のプライバシーを守るため、アクセスできる権利を限定したり、データを保護したりするなどの取り組みが進められています。
 個人遺伝子情報をいかに活用し、いかに保護するか――ここにDNAデータベースの成否がかかっているといってもいいでしょう。

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