プロジェクト概要

Project Summary

BT(Build-Test)領域

蓮沼 誠久
神戸大学 先端バイオ工学研究センター
センター長・教授

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この領域でできること

DBTLのBuildおよびTest工程の要素技術としては、近年、自動化技術の進展が著しい。従来の微生物育種では、微生物に導入するDNAを設計し、そのDNAを入手した後、プラスミド構築、形質転換(遺伝子組換え)、培養条件の検討、生産性評価を人間の手で行っていたのに対し、プラスミド構築から簡易的な生産性評価までを半自動で行うロボットが開発されてきている。

BT領域の紹介

一般に、遺伝子組換えを利用する微生物育種では、特定の遺伝子の発現量を、特定の時期に、特定の度合いで強化あるいは抑制する必要がある。これを実現するには遺伝子の発現調節に関与する分子を部品(パーツ)として手元に持っておく必要がある。この部品は例えば、プロモーター、リプレッサー、RBS、ターミネーター等であるが、DNAパーツと総称されている。今日の分子生物学的知見ではDNAパーツの仕様は不明確であり、組み合わせ方次第で遺伝子の発現量が変わるため、実験による試行錯誤が必要である。そこで、米国等のバイオベンチャーではカタログ化したDNAパーツとロボティクスを活用してバイオ操作を自動で行うラボオートメーションシステムを既に作り上げている。

NEDOスマートセルプロジェクトでは、世界一高いDNA集積精度を有する長鎖DNA合成技術のハイスループット化や、長鎖DNAを利用して多様性を有する微生物を短時間で構築する技術、生産性データおよびオミクスデータを高精度かつハイスループットで取得する技術、といった独自ハイスループット技術の開発を進めてきた。具体的には以下の研究開発に取り組んでいる

Build工程

1.長鎖DNA合成・解析技術の開発
2.ハイスループット微生物構築・評価技術の開発
3.化合物排出輸送体探索プラットフォームの構築

Test工程

4.メタボライトセンサの開発
5.自家蛍光顕微鏡の開発
6.トランスクリプトーム解析技術の開発
7.高精度定量ターゲットプロテオーム解析技術の開発
8.メタボローム解析技術の開発
9.評価系のネットワーク化

長鎖DNAは一度の組換えで多数の遺伝子の発現を強化・抑制できるため、微生物の高速育種に極めて有用である。情報解析で設計された新規代謝経路を短期間で具現化することにもつながる。これまでの主な成果は以下の通りである。

●30 kb超の長鎖DNAを正確(変異率0.1%以下)に低価格(5円/塩基)で従来の1/4以下の期間(2週間程度)で合成する技術の確立

●96穴プレートフォーマットの半自動ハイスループット形質転換技術の構築

●化合物排出輸送体を探索するプラットフォームの開発

●画像解析等により目的物質の生産性をハイスループットに評価する技術の開発

●タンパク質の定量が可能な微生物プロテオーム解析技術の開発

●前処理ロボットの開発等によるスループット、精度、網羅性の高いメタボローム解析システムの構築

本プロジェクトでは、要素技術のスマートセル創出プラットフォーム(図1)への組み込みを進めている。また、独自のハイスループット評価技術の高精度化を図り、情報解析技術との連携を強化して体系的なデータの取得・管理を行っている。

図1.スマートセル創出プラットフォームを利用したワークフローの例

バイオ生産で求められる有用物質の多くは、細胞内で共通の前駆体から生合成されており、この前駆体を「ハブ化合物」、ハブ化合物の生産性が高い株を「シャーシ株」と定義した。ひとたびシャーシ株が開発できていると、これを宿主として目的生産株の育種期間を短縮することが可能なため、シャーシ株は産業界からのニーズが高い。

従来、有用宿主の単離・育種には膨大な時間を要してきたが、本プロジェクトでは長鎖DNAを用いた高効率な多重遺伝子導入・破壊技術、複数遺伝子の発現量最適化技術、半自動ハイスループット形質転換技術、ハイスループット評価技術を活用することで、シャーシ株ならびに実用株の開発期間を短縮することが可能である。

出芽酵母や大腸菌等の汎用微生物だけでなく、産業用微生物にも適用性を拡げ、民間企業が標的とする特定の生産物質でスマートセル創出プラットフォームの有効性を検証している。

最終更新日:2020年3月30日 18:35