個別技術紹介

Individual Technology

代謝経路設計技術


白井 智量
国立研究開発法人理化学研究所

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要旨

ゲノム情報に基づいた代謝反応モデル(Genome Scale Model:GSM)を利用した代謝設計により、有用化合物を高効率で生産する微生物の設計提案を行うことを目的としています。個々の代謝設計ツールを連携させながら、オミクスデータを導入した予測精度の高いツールの実用化に取り組んでいます。

研究の内容

有用化合物を微生物に生産させるとき、細胞内の炭素の流れだけでなく、エネルギーの生産・消費や酸化還元のバランスをも含めた『代謝』を最適に設計する技術は必須である。なぜなら細胞内の表現型を理解し、その情報を目的の細胞の代謝設計およびその後の育種に応用できるためである。しかし、1つの細胞内で1,000以上存在する代謝反応を人間の頭だけで考えるのには限界があり、コンピュータによる計算力が必須となる。特に近年、ゲノムシーケンス技術と情報処理技術の革新によるアノテーションの迅速化により、ゲノムスケールレベルで全代謝反応をコンピュータ上に記述できるようになった。これにより、ある環境での微生物細胞の代謝の振る舞いを予測する技術が確立されている(ゲノムスケールモデル:GSM)。現在はGSMを用いた細胞の代謝設計から、実際の実験による検証までをシステマティックに行い、ハイスループットに目的化合物の生産性を向上させる研究が盛んとなっている。本プロジェクトにおいて、我々は、ゲノム情報から代謝反応を自動で作成するシステムを開発した。しかし、既存のGSMでは非天然化合物の生合成経路を予測・設計すること、宿主細胞以外が持つ代謝反応を利用した設計は困難である。

本プロジェクトでは、これらの問題を解決する技術となる代謝設計ツールを開発し、実用微生物へ技術展開している。

産業界などへのアピールポイント

開発した各代謝設計ツールと相互に機能化した代謝設計システムを運用し、産業界や研究機関等からのニーズに合わせた自由度の高い代謝設計システムの開発を目指しています。

目的化合物の生産に向けた代謝設計に関する有用情報の提供を目指しています。

参考文献

1)M. Araki et al. : Bioinformatics, 31(6), 905-911 (2015)
2)T. Shirai et al. : Microb. Cell Fact., 15(13), 1-6 (2016)

最終更新日:2020年6月23日 16:51