個別技術紹介

Individual Technology

発現制御ネットワーク構築技術


油谷 幸代
国立研究開発法人産業総合研究所

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要旨

物質生産時に微生物細胞内で起こっている現象メカニズムを理解し、それを一つの稼働システムとして制御することを目指し、遺伝子発現データから物質生産に寄与している遺伝子を選択し、それらの相互作用をネットワークモデルとして表現することで、人為的制御を行うための改変候補遺伝子を提案する。

研究の内容

微生物による効率的物質生産を実現するためには、物質生産時に微生物細胞内で起こっている現象メカニズムを理解し、それを一つの稼働システムとして制御することが必要である。この生体細胞内における複雑な「システム」を理解し活用するためには、遺伝子の発現制御ネットワークモデルが有用である。我々は遺伝子間の制御関係をネットワークモデルとして構築することで、生体細胞内で起こっているプロセスを因果グラフとして表現し、そのプロセス工程におけるボトルネック探索や効率化に必要な改変操作ポイント探索を可能にするための技術開発を行った。

物質生産性に寄与する遺伝子群を推定技術として、本研究では統計検定、相関解析、論理演算を組み合わせることでより高精度に物質生産関連遺伝子群を抽出できるフローを開発した。

制御システムの部品として、候補遺伝子が選択されたのち、遺伝子間の制御関係をネットワークモデル化を実施している。先に選択されたターゲット物質の生産量と相関している可能性が高い遺伝子群の中から、物質生産プロセスにおいてターゲット物質生産量を調節する制御因子となりうる遺伝子をネットワークモデルによって明らかにしている。本研究では、ベイジアンネットワーク1)と、産総研で開発してきた構造方程式モデル2,3)を組み合わせることで、より高精度なネットワーク構造推定を行っている。

産業界などへのアピールポイント

これまでに、従来型育種では探索できなかった改変候補遺伝子を数多く提案し、2~10倍程度の生産量増加に成功していることから、本技術は高生産性微生物創製に資する技術と言える。さらに、本技術は遺伝子発現データのみならず、数値データであればどのようなデータにでも適用可能な技術であり、その適用範囲は広い。微生物による物質生産のみならず、ブラックボックスとなっているある種のシステムを制御する必要がある場合には適用可能な技術である。

参考文献

1) N. Friedman et al. : J. Comput. Biol., 7(3-4), 601-620 (2000)

2) S. Aburatani : Gene Reg. Sys. Biol., 5, 75-88 (2011)

3) S. Aburatani and H. Toh : Encyclopedia of Information Science and Technology, 3rd Edition, pp.458-478, IGI Global (2015)

最終更新日:2020年6月23日 16:56