技術紹介

Technology Introduction

長鎖DNA合成技術

柘植 謙爾
神戸大学科学技術イノベーション研究科
特命准教授

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この技術でできること

設計された長鎖DNAを短期間に、低コストで、正確に構築することができる

技術紹介

スマートセル開発のスピードアップにおいては、DBTLサイクルをいかに早く回転させるかが焦点となる。各ステップについて見ると、Buildステップ、すなわち、Designで設計された配列を持つ菌株を実際に構築するステップに最も時間がかかる。その中でも設計された配列を持つ長鎖DNA合成には、従来数カ月と長期間を要するという状況であった。

本技術では、長鎖DNAを構築するために、独自開発したOGAB(Ordered Gene Assembly in Bacillus subtilis)法という遺伝子集積技術を用いた(図1) 1),2)。OGAB法は、枯草菌のプラスミド形質転換系を利用した多重DNA断片の集積法で、DNA断片の末端に設計した3~4塩基の特異性を利用して、最大で50個を超えるDNA断片を一度の操作で連結する。任意の長鎖DNAを構築するためには、化学合成した一本鎖DNAを出発材料としてOGAB法に用いる数100~数1,000 bpのサイズの二本鎖DNA断片を準備する必要がある。これまでは、この合成を受託DNA合成会社に委託していたが、50個のDNA断片を同時に発注しようとすると、多くのDNA断片は問題なく合成される一方で、合成を受け付けてもらえないケース、あるいは、合成を試みたが結果的に合成できずにキャンセルされるケースが必ずといってよいほど発生する。その場合、他の受託合成会社へ再発注する、あるいはDNA断片の設計を変更するなどの方策を行い、最終的に必要なすべてのDNA断片を準備するのに2カ月という長期間を要することもあった。

図1.OGAB法による遺伝子集積の概要

そこで、DNA断片の調達時間を短縮するために、化学合成で構築した長鎖DNAの大量調製が可能なトータルシステムを神戸大学内に整備し、全体を俯瞰した技術開発を行った(図2)。個別には、まず日本テクノサービス㈱との共同研究により、長鎖DNAの合成に特化した、低コストで、200塩基の一本鎖DNA96本を、約1日で合成するDNA化学合成装置を開発した(図2左)。また、化学合成したDNAを、相補性を利用して張り合わせ、伸長するために、新規のPCR方法を開発した。これにより、どのような配列であっても3日程度で二本鎖のDNAを準備することが可能となった。この二本鎖DNAをいったん大腸菌でクローニングし、塩基配列が正しいクローンのみを選択してOGAB法の材料に用いる工程も、液体分注ロボットによる大幅な自動化を達成した(図2中央)。これらの研究開発の結果、30 kb程度の長鎖DNAを、1塩基当たり数円でかつ2週間程度の短期間で製造できるようになり、従来の時間コスト、金銭コストの大幅な削減を達成した。

図2.神戸大学に構築した長鎖DNA合成トータルシステム

関連特許

特許第4479199号 「挿入DNAユニットを含むプラスミドの製造方法」
特許第6440636号 「単位DNA組成物の調製方法及びDNA連結体の作製方法」

最終更新日:2020年6月17日 11:26