バイオテクノロジーに関すること
Q1. バイオテクノロジーとはどんなものですか。
Q2. 遺伝子やDNAとはどんなものですか。

遺伝子組換え技術について
Q3. 遺伝子組換え技術とはどんな技術ですか。
Q4. 何の為に遺伝子組換え技術を用いるのですか。
Q5. 従来の品種改良と遺伝子組換えとはどう違うのですか。
Q6. 遺伝子組換え農作物はどのようにして作るのですか。
Q7. 遺伝子組換え技術とクローン技術とはどう違うのですか。

遺伝子組み換えの現状について
Q8. 我が国では遺伝子組換え技術を用いてどんな農作物が開発され、商品化されているのですか。
Q9. 我が国にすでに輸入されている遺伝子組換え農作物はありますか。
Q10. 現在、遺伝子組換え農作物の作付け面積はどのくらいですか。
Q11. 現在、どこでどんな生物について、遺伝子組換え技術を利用した研究が行われているのですか。

遺伝子組換え食品について
Q12. 遺伝子組換え技術を利用した食品にはどのようなものがあるのですか。
Q13. バイオテクノロジーを使って作られた食品と遺伝子組換え食品とはどう違うのですか。
Q14. 遺伝子組換え食品はいつごろから出回っているのでしょうか。
Q15. 実質的同等性とは何ですか。
Q16. 成分組成が変わっている遺伝子組換え食品の場合は、実質的同等性の考え方があてはまらないのではないですか。
Q17. 遺伝子組換え技術によって作られた農作物の食品としての安全性は、どのように確認されているのですか。海外から輸入される農作物の安全性についても同様に確認されているのでしょうか。
Q18. 今までに厚生省による安全性審査が終了した遺伝子組換え食品にはどんなものがあるのですか。
Q19. 安全性評価では、哺乳類の細胞や実験動物を用いて慢性毒性や遺伝毒性などの検査が行われているのですか。
Q20. 遺伝子組換え食品がアレルギーを引き起こすことはありませんか。
Q21. 遺伝子組換え食品がガンを引き起こしたり、胎児に影響を与えたりすることはありませんか。
Q22. 遺伝子組換え食品と、普通の食品とは栄養成分に違いがあるのですか。
Q23. 遺伝子組換えに大腸菌由来の遺伝子を用いると聞きましたが、0-157のような病原性はないのですか。
Q24. 遺伝子組換え農作物には抗生物質耐性遺伝子が入っているものがあると聞きましたが、人体に影響はないのですか。
Q25. 害虫抵抗性の遺伝子組換え食品には、害虫を殺す蛋白質が入っていると聞きましたが、人が食べても問題はないのですか。
Q26. 家畜が遺伝子組換え飼料を食べ、その肉を人間が食べたとき、どのような影響があるのですか。
Q27. 遺伝子組換え食品を食べると、その遺伝子や遺伝子産物であるタンパク質が体内で働くことはないのですか。
Q28. 遺伝子組換えトウモロコシ・大豆そのものではなく、コーンフレークや油などの加工食品の安全性はどのように確認されているのですか。
Q29. 遺伝子組換え技術でつくったキモシンを用いたチーズは、遺伝子組換え作物と同じように申請され認可された製品なのですか。またすでに市場に出回っているのですか。

環境への影響について
Q30. 遺伝子組換え農作物が組み換えてない農作物と自然交配して、組み換えられた遺伝子が周囲の生物に広がっていくことはないのですか。
Q31. 遺伝子組換え農作物の環境に対する影響は、どのように確かめられているのですか。
Q32. 除草剤の影響を受けない農作物が雑草化したり、他の雑草と交雑すると、除草剤耐性の雑草ができることはありませんか。
Q33. 害虫耐性の植物の利用により殺虫剤耐性を持つ害虫が発生することはありませんか。
Q34. 害虫耐性の植物により昆虫がいなくなり、生態系に異変をもたらしませんか。
Q35. 除草剤耐性作物によって農薬使用量が増えることはないですか。
Q36. 遺伝子組換え農作物から採った種をまいたらどうなるのですか。
Q37. 遺伝子組換え技術により、環境に対して予期せぬ影響が現れることはないのですか。

遺伝子組換えのメリット・デメリットについて
Q38. 遺伝子組換え技術を使うと消費者にどんなメリットがあるのですか。
Q39. 遺伝子組換え技術を使うと農家にどんなメリットがあるのですか。
Q40. 遺伝子組換え技術を使った農作物は食糧の生産と供給にどんなメリットがあるのですか。
Q41. 遺伝子組換え技術を農林水産業や食品産業で使うとどんなメリットがあるのですか。
Q42. 遺伝子組換え農作物は栽培コストが安くなるといわれていますが、その分、農作物の価格は安くなるのですか。

遺伝子組換え技術の規制状況について
Q43. 遺伝子組換え技術の利用に関して、日本ではどのような指針(ガイドライン)があるのでしょうか。
Q44. 遺伝子組換え技術の利用に関して、諸外国、国際機関ではどのような規制があるのでしょうか。

遺伝子組換え食品の表示について
Q45. 2001年4月からJAS法で表示義務が課されている食品は何ですか。
Q46. 表示方法の区分はどのようになっているのですか。
Q47. しょうゆや食用油などではDNA が検出されないのはなぜですか。
Q48. 「使用」、もしくは「不分別」と表示された食品は安全性に問題があるのですか。
Q49. ビールなどの酒類にも遺伝子組換えコーンが使われていると聞いたことがありますが、農水省の品目リストではどれに該当するのですか。
Q50. 遺伝子組換えトマトが、リストには入っていないのは何故ですか。
Q51. 遺伝子組換え飼料を用いた食肉、乳製品などは、表示の対象となるのでしょうか。
Q52. 組み換えられた遺伝子や遺伝子産物を検出する技術は確立されているのでしょうか。
Q53. 遺伝子組換え農作物はほとんどが輸入品と聞きますが、非組換え農作物の分別輸入や未承認の遺伝子組換え農作物の侵入を確認・規制する制度はあるのですか。
Q54. 非組換え体、組換え体の分別はどのように行われているのでしょうか。IPハンドリングとはどのようなものなのでしょうか。
Q55. 遺伝子組換え原料の混入率が何%以上で表示が義務付けられるのですか。
Q56. 表示が正しいかどうかをチェックする組織、機関はあるのですか。
Q57. 表示義務を怠った場合の罰則はどうなっているのですか。
Q58. 遺伝子組換え食品の義務表示によって、非組換え食品の価格が上がることはありませんか。

食糧問題について
Q59. 日本は食糧の完全自給を達成することは難しいのですか。
Q60. 遺伝子組換え食品は21 世紀の食糧危機を救えるのですか。
Q61. 種子と除草剤をセットで売ることで、一部の大企業が農家を支配することになりませんか。

クローン技術について
Q62. 「クローン技術」とは何ですか。また、どのようなことに役立つのですか。
Q63. クローン牛は、どのように作られるのですか。
Q64. クローン牛の研究は、どこで行われているのですか。
Q65. クローン牛の食肉及び牛乳が出荷されたのは、いつからですか。
Q66. クローン牛の食品としての安全性に問題はないのですか。
Q67. クローン牛は、死産等の率が高く、また、生まれた牛は虚弱で特別な飼料や医薬品等を使用した飼育を行っているというのは本当ですか。
Q68. 農家がクローン技術により同じ遺伝子しか持たないクローン牛群を飼うのは、ひとつの病気に多くの牛が感染したときに、一般の牛を飼うより被害が大きくなることはありませんか。
Q69. 試験場からクローン牛が、食肉として出荷されることには、問題はないのですか。
Q70. 海外におけるクローン家畜の生産および利用の状況はどうなっているのですか。
Q71. クローン牛の肉には、消費者側が買う、買わないの選択をするために表示をする必要があるのではないですか。
Q72. クローン技術に対して倫理上の問題はないのですか。

環境問題などバイオテクノロジーの応用分野について
Q73. バイオレメディエーションとは何ですか。具体的にどのような例があるのでしょうか。
Q74. バイオレメディエーションのメリット、デメリットは何ですか。
Q75. 生分解性プラスチックとはどのようなものなのでしょうか。
Q76. 他にどのような技術が環境問題に適用できるのでしょうか。
Q77. 環境問題以外にエネルギー・資源問題にもバイオテクノロジーが役立つと聞いたことがありますが、具体的にはどんな技術なのでしょうか。
Q78. 医薬品や化学品の製造にもバイオテクノロジーが使われているそうですが、どのようなものがつくられているのですか。
Q79. これ以外にバイオテクノロジーは今後、どのような分野に応用されていく可能性があるのでしょうか。

ヒトの遺伝子解読、ゲノム解析について
Q80. ヒトゲノム計画とは何ですか。
Q81. ヒトゲノム解析とは何で、解析の結果、どのようなことができるようになるのですか。
Q82. 人のゲノム解析はどのくらい進んでいるのですか。
Q83. オーダーメード(テーラーメード)医療とは何で、どんなメリットがあるのですか。
Q84. 個人の遺伝子を解読することにより、性格、能力、寿命などその人の一生を予測できるようになるのですか。
Q85. 個人の遺伝情報が解読されることはプライバシーの侵害につながるのではないですか。また、そのような遺伝情報が勝手に利用されないような対策はありますか。
Q86. 個人の遺伝情報の解読により、就職にあたっての差別、生命保険への加入拒否などの問題は生じませんか。
Q87. 人の遺伝情報は人類共通の資源だと思いますが、ゲノム解析の結果を利用して民間企業が特許を取得したりするのは問題がありませんか。

遺伝子治療について
Q88. 遺伝子治療とはどんな技術でどんな効果があるのですか。
Q89. 遺伝子治療はどのような病気に対して行われるのですか。また、これまでに行われた例はありますか。
Q90. 最近、海外で遺伝子治療による死者が出たという新聞記事を見ましたが、遺伝子治療の副作用など安全性の問題はないのですか。
Q91. 遺伝子を改変することで次世代以降への影響はないのですか。
Q92. 遺伝子治療について何かルールがあるのですか。

出生前診断、生殖工学について
Q93. 出生前診断とはどんな診断ですか。
Q94. どのような病気がわかるのですか。
出生前診断では誤った診断が下されることはないのですか。
Q95. デザイナーズ・チャイルドとは何ですか。バイオテクロノジーの進歩により、生まれてくる子供の遺伝子を自由に改変できるようになるのでしょうか。
Q96. バイオテクロノジーの生殖医療への応用について規制はあるのですか。

もっと知りたい方へ
Q97. 遺伝子組換え技術の利用に関する詳しい情報はどこで入手できますか。
Q98. 個々の遺伝子組換え作物についての情報はどこで入手できますか。
Q99. 食品の安全性評価に用いた資料等は公開されているのですか。
Q100. バイオテクノロジーについての情報を提供する一般向きの本やホームページはありますか。

  用語集

 
Q38. 遺伝子組換え技術を使うと消費者にどんなメリットがあるのですか。
次の質問へ
Answer
 遺伝子組換え技術は、食品の風味を改善したり、より栄養価の高い食品を作ったり、食品の機能性を高めたり、また食品の生産性を向上させるなど、私達消費者にもさまざまなメリットをもたらします。具体的には次のような例があります。
  1. 現在米国で販売されているフレーバーセーバートマトは、作物の熟期に係る遺伝子の働きを調整することによって、流通過程でトマトが腐ってしまうことを防ぐことを可能にしました。畑で出荷直前まで成熟させることが可能になったことで、畑で熟した美味しいトマトを食べることができるようになりました。
  2. コレステロールを下げる働きがあることが報告されているオレイン酸の含有量を増加させ、より健康に良い脂肪酸組成を持つように改良された大豆も、米国では既に商品化されています。
  3. 食品中のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)の含有量が少ない農作物は、米などで研究が進められています。これが実用化されれば食品アレルギーの患者さんには大きなメリットがあ ります。
  4. 毎日の食事を通して貧血を防ぐことを目標に、お米の鉄分を増やす研究も進められています。 このような鉄分の多い米は貧血予防に有効です。
このような消費者個人個人へのメリットに加えて、私たち全体への大局的なメリットもあります。遺伝子組換え技術を利用することによって、私達の食糧を安定的に供給することが出来 るようになります。病害虫に対する抵抗性を向上させた作物は、農薬の散布量を減らし、環境を保全しながら病害虫による収量や品質の低下を防ぐ有効な手法です。また将来は、遺伝子組換え技術によって、塩害や冷害で現在は作物を栽培できない地域でも作物が栽培できるようにする取り組みも行なわれています。

参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A(日本国際生命科学協会)

Q39. 遺伝子組換え技術を使うと農家にどんなメリットがあるのですか。
次の質問へ
Answer
 除草剤や殺虫剤の散布回数が減るので、薬品代や薬品を撒くために必要な人件費などの費用が減り、さらに害虫や雑草による収穫や品質の低下も避けられます。また、薬品の散布にと もなう重労働も軽減されます。

[害虫抵抗性作物]

  害虫による被害で作物の収量が減少しないように、通常は殺虫剤をまきます。しかし、殺虫剤をまいても防除しづらい害虫もあります。その一例がトウモロコシを食害するアワノメイガと呼ばれるガの一種です。この虫はトウモロコシの茎の中を食害するので、殺虫剤をまいても効果が薄く、毎年多大な被害を与えています。アメリカでは、3,237万ヘクタールのトウモロコ シ畑のうち、およそ75%がアワノメイガの食害を受けており、殺虫剤を散布しても半数以下のアワノメイガしか防除できず、収量の低下は年によって異なりますが6〜30%に及ぶと言われています。しかし遺伝子組換えにより、細菌の一種、Bacillus thuringiensis のBt タンパク質生産遺伝子(→Q33, Q34)を取り出し、トウモロコシに導入するのに成功したので、この品種を栽培すれば、アワノメイガによる収量の低下は避けられるようになります。

[除草剤耐性作物]

  雑草による収量の低下や雑草種子の混入による収穫物の品質低下(ナタネの場合)を避けるには、除草剤の散布が必要です。今までは、作物に被害を与えず他の全ての雑草が枯れるような除草剤はなかったので、特定の雑草を枯らす除草剤(選択性除草剤)を何種類も組み合わせて何回も施用するしかなく、重労働を強いられ、除草剤の使用にともなう費用がかさんでい ました。しかし遺伝子組換えにより、除草剤耐性品種が出たので、雑草全てを枯らす除草剤 (非選択性除草剤)を使用することが出来るようになりました。今回、耐性品種が作られた非選択性除草剤(ラウンドアップやバスタなどの商品名で販売されています)は作物の生育初期ないし中期に1〜2度散布すればよいので経済的です。また環境中で速やかに水と二酸化炭素にまで分解され、作物中や土壌中に残留することがないので、従来の農薬よりも環境に与える影響が少なくなると考えられます。

参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A(日本国際生命科学協会)

Q40. 遺伝子組換え技術を使った農作物は食糧の生産と供給にどんなメリットがあるのですか。
次の質問へ
Answer
 食品原料が安定的に供給されることが期待できます。
 国連の世界人口予測によれば、現在60億人といわれている世界人口は、2000年には62億人、2050年には98億人になると推計されています。またアジア地域の経済成長に伴い、特に中国において穀物中心から肉食中心に食生活が変化し、急激な飼料用作物の需要増加が起こりつつあり、21世紀の初めに世界規模で食糧不足が起こると予測されており、食糧保全の道を探る緊急性が指摘されています1)2) 。日本の場合、現在、穀類の自給率は30%を割り、不足分を輸入しています。(表1,2)
 今までは食糧増産に関しては、耕地面積を拡大したり高収量品種を栽培することで対処してきました。しかし耕作可能な土地は既にほとんど耕地となっており、耕地面積の拡大はあまり望 めません。工業化が進んでいる地域では耕地の農業以外の用途への転用も起こっています。すなわち、人口増加に伴って人口1人当たりの耕地面積は減少する一方です。1950年から1990年にかけて単位面積当たりの穀類生産は飛躍的に増大しました。しかし、先進国では化学肥料、農薬の使用は限界に達しています。その一方で発展途上国では砂漠化や農業用水資源の枯渇等により、収量増大は望めないのが現状です1) 。
 遺伝子組換え農作物は、効率的な品種改良により、食糧問題を解決するための農業生産性の向上に、大きな期待が寄せられています。害虫抵抗性組換え農作物や除草剤耐性組換え農作物の栽培は、食品原料の安定的な供給に寄与すること、持続的な農業を可能にすることから、これらの作物は食糧の安定的な生産と供給にメリットがあると考えられます。

表1 世界の大豆生産量および輸出入量 上位四カ国
(単位:千t )
国名 生産量*(%)   国名 輸出*(%)   国名 輸入*(%)
米国 64.840(49.3) 米国 24,000 (65.0 ) EU 15,200(41.7)
ブラジル 26,800 (20.4) ブラジル 8,420(22.8) 日本 5,040(13.8)
中国 13,220(10.0) アルゼンチン 87,50(2.0) 台湾 2,630(7.2)
アルゼンチン 11,200(8.5)     旧ソ連 2,140(0.4)
世界計 131,640 世界計 36,950 世界計 36,440
アグロトレード・ハンドブック'98(JETRO)より
*1996/1997(年度は10月〜9月)

   
表2 世界のトウモロコシ生産量および輸出入量 上位四カ国
(単位:千t )
国名 生産量*(%)   国名 輸出**(%)   国名 輸入**(%)
米国 187,300(36.4) 米国 40,365(58.8)日本 16,863(24.5)
中国 111,990(21.8) 中国 11,098(16.2) 韓国 6,207(9.0)
ブラジル 36,276(7.1) フランス 7,632(11.1) 台湾 5,466(8.0)
メキシコ 16,187(7.1) アルゼンチン 4,871(7.1) ロシア ロシア
世界計 131.640 世界計 36,950 世界計 36,440
FAO 貿易年鑑より、*1995、**19931)島本功、植物バイオサイエンスと21世紀の食糧・環境:科学と生物、Vol.35(3)pp 225-228(1997)
2)森島賢、金井道夫、大賀圭治、小山修、中川光弘:世界は飢えるか−食糧需要長期展望の検証、農山漁村文化協会(1995)

Q41. 遺伝子組換え技術を農林水産業や食品産業で使うとどんなメリットがあるのですか。
次の質問へ
Answer
 農林水産業・食品産業等における遺伝子組換え技術は、画期的な新品種の作出、生産工程の効率化等といった私達の身近な分野への貢献はもちろんのこと、21世紀半ばの人口100億人時代の食糧問題、地球環境問題等を解決するためのキーテクノロジーとしても期待されています。
 その他の例としては、遺伝子組換え技術の利用により、ある生物から有用な遺伝子だけを取り出し、他の生物に導入することで、いままでにはできなかった品種改良を行うことができます。農作物を利用して自然の状態で分解するプラスチック製品を作ることやエネルギー資源として用いるなど、これまでと全く異なった農作物の利用形態を生み出す上でも有効です。

  具体的には、遺伝子組換え技術は、次のような課題への対応を可能にする技術と言えます。
  1. 消費者ニーズに沿った農林水産物・食品の生産(→Q38
    栄養成分や機能性成分(抗ガン効果等)に富む農作物、日持ちの良い農作物、アレルギー 原因物質を除いた食品の生産
  2. 生産力の飛躍的向上による食糧問題解決への貢献(→Q40
    超多収農作物、低温・乾燥・塩害などの不良環境や病虫害に強い農作物の開発
  3. 環境・資源問題の解決への貢献(→Q73〜77
    生分解性プラスチック、微生物による環境浄化、病虫害抵抗性を与えることによる農薬使用量の減少等
参考資料:
組換え農作物早わかりQ&A(農林水産省農林水産技術会議事務局)

Q42. 遺伝子組換え農作物は栽培コストが安くなるといわれていますが、その分、農作物の価格は安くなるのですか。
次の質問へ
Answer
 栽培コストが安くなれば価格への反映が期待されます。しかし、穀物の価格は米国シカゴの商品取引所で決まるので、すぐに必ず安くなるとは言えません。

  大豆、トウモロコシ等の価格はシカゴの商品取引所で需要と供給のバランスなどを考慮して決まりますので、栽培コストが安くなっても、必ずしもそれが最終価格に反映されるとは言えません。需要と供給のバランスによる経済的要因の方が栽培コストよりも価格に与える影響が大きいのです。
 しかし、1) 害虫抵抗性遺伝子組換え農作物は特定の害虫のみを防除し、益虫を減少させることがないので、生態系に対する影響が少ないこと、2) 除草剤耐性遺伝子組換え農作物は不耕起栽培を可能にすることにより、土壌の流亡を防いで農地を保全し、持続的な農業を可能にします。
 したがって長期的にみれば、世界的な凶作による食糧危機の危険性を少なくし、 食糧の安定供給に貢献することによって、品不足による価格高騰の危険性を減らすので、作物の価格安定に役立つと思われます。

(用語)
1.不耕起栽培 土地を耕さない農法のことをいいます。畑作農業を基本とする海外では、耕作にともなって肥沃な表土が失われ、土壌が浸食されという問題が発生しています。不耕起栽培は、土を耕さないので土壌の浸食防止に有効です。

参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A(日本国際生命科学協会)


更新日: 2006年10月25日


Copyright(C) 2000-2003 Japan Bioindustry Association. All Rights Reserved.