技術紹介

Technology Introduction

発現制御ネットワーク構築技術

油谷 幸代
国立研究開発法人産業技術総合研究所
生体システムビッグデータ解析OIL 副ラボ長

theme

この技術でできること

遺伝子発現データからの遺伝子間相互作用をネットワークモデルとして表現することで、細胞内で起こっている現象を一つのシステムとして理解し、人為的制御を行うための改変候補遺伝子を提案する。

使用された技術活用事例有用芳香族化合物ω-3系多価不飽和脂肪酸含有油脂

技術紹介

微生物による効率的物質生産を実現するためには、物質生産時に微生物細胞内で起こっている現象メカニズムを理解し、それを1つの稼働システムとして制御することが必要である。この生体細胞内における複雑な「システム」を理解し活用するためには、遺伝子の発現制御ネットワークモデルが有用である。我々は遺伝子間の制御関係をネットワークモデルとして構築することで、生体細胞内で起こっているプロセスを因果グラフとして表現し、そのプロセス工程におけるボトルネック探索や効率化に必要な改変操作ポイント探索を可能にするための技術開発を行った。

第一に、物質生産性に寄与する遺伝子群を推定技術の開発を行った。生体細胞において、物質生産等の細胞内現象に必要な遺伝子は約10%~20%と推定されていることから、物質生産に貢献している遺伝子群を同定する必要がある。本研究では、統計検定、相関解析、論理演算を組み合わせることでより高精度に物質生産関連遺伝子群を抽出できるフローを開発した(図1)。

図1.論理演算を組み合わせた遺伝子選択フロー

第2に遺伝子間の制御関係をネットワークモデル化する技術の開発を行った。前項で選択された遺伝子群は、ターゲット物質の生産量と相関している可能性が高い遺伝子群であり、選択された遺伝子群とターゲット物質の関係性には方向性がない。そこで、選択された遺伝子群から物質生産プロセスにおいてターゲット物質の上流に位置し、ターゲット物質の生産量を調節する制御因子となりうる遺伝子をネットワークモデルによって明らかにする必要がある。本研究では、ベイジアンネットワーク1)と、産総研で開発してきた構造方程式モデル2,3)を組み合わせ、より高精度なネットワーク構造推定を行っている(図2)。

図2.ネットワークモデル構築とグラフ構造からの制御因子推定

構築されたネットワークモデルの再帰的構造を包含していることから、ネットワークモデルに存在する「どのノード(遺伝子)」がターゲット物質の量を調節する上で効率的な制御因子となりうるか推定し提案している。ターゲット物質の量を調節(最大化・最小化)するために必要な制御因子を探索するアルゴリズムを開発し、改変候補遺伝子を提案している。これまでに、2倍~<10倍程度の生産量増加に寄与する遺伝子の探索に成功した。

最終更新日:2020年6月23日 16:40