技術活用事例

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植物由来の高機能プラスチック ーポリアミド原料の発酵生産技術開発ー

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使用した技術

代謝経路設計技術酵素改変設計技術導入遺伝子配列設計技術発現制御ネットワーク構築技術

実施機関

東レ(株)、(国研)産業技術総合研究所、(国研)理化学研究所

研究開発のゴール

既存の高機能プラスチック(ポリアミド)原料を植物バイオマスから微生物発酵により高生産する技術を開発し、既存品と置き換えることでプラスチック製造におけるカーボンリサイクルを実現する。

目的

 現在普及している高機能プラスチック(ポリアミド)原料を石油から植物バイオマスに置き換え可能にする技術を開発し、温室効果ガス(GHG)排出削減および持続可能な循環型社会の構築に貢献する。目指す植物由来ポリアミドは、既存品と同じ物理特性であり任意にブレンド可能であるため、用途展開および市場拡大が容易であることが大きな特長である。
 このようなポリアミド原料の微生物生産は、世界的に研究開発がなされているが実用化には至っておらず、天然に通常存在しない化合物を大量生産する微生物の創出が課題である。本課題は、世界初となる本ポリアミド原料生産の実用化に向けてスマートセル基盤技術を活用し、微生物の生産性を短期間で大幅に向上させることを目的とする。

結果・成果

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①生産性を最大化する生合成経路の設計

②高生産微生物の作成・評価
 ポリアミド原料の生合成経路の最適化を目的として、代謝予測(基盤技術)と実験検証に基づく株の遺伝子改変に取り組み、生産性を3.2倍に向上させることに成功した。

③オミクスデータに基づく潜在的な生産性向上遺伝子の探索
 種々の生産株および培養条件下での培養試験で取得したトータルRNAをRNA-seqに供し、得られた遺伝子発現データを元に発現制御ネットワーク推定(基盤技術)を実施した。そこで見いだされた、ポリアミド原料の生産性向上に寄与すると推定される5遺伝子の評価を行った結果、生産性が向上した3遺伝子の取得に成功した(最大1.3倍向上)。

④RNA二次構造予測による遺伝子発現の最適化
 ポリアミド原料の生合成において律速となっている酵素の発現量向上を目的として、mRNAの二次構造予測に基づく塩基配列設計(基盤技術)を実施した。目的酵素遺伝子のORF上流に翻訳を促進するタグ配列を付加することで、発現量および生産性を向上させることに成功した。

⑤立体構造シミュレーションによる生合成酵素の高機能化
 生合成酵素の活性向上を目的として、酵素の立体構造に基づく改変に取り組んだ。改良されたMD計算方法であるALSD法(基盤技術)を用いて目的活性の向上に寄与するアミノ酸残基を推定した。最も評価スコアが高かったアミノ酸残基を他の19種類のアミノ酸残基に置換した変異体を作成・評価した結果、1回のMD計算試行で活性が14倍に向上した変異体の取得に成功した。

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関連特許

出願準備中

最終更新日:2022年11月14日 12:43