植物には一つの細胞から完全な植物を作る能力を持ったものがあり、この性質を利用して植物をいったん細胞の塊(カルスといいます)にしてから遺伝子を導入し、もう一度植物体を再生させれば、遺伝子組換えの植物を作ることが出来ます。「青いバラ」はこのようにして作られました。
バラの花びらに含まれるフラボノイド色素は、黄色のペラルゴニジンと、赤色のシアニジンのみで、青色のデルフィニジンは存在しません。これが今まで「青いバラ」が出来なかった理由です。
今までに交配で「青いバラ」といわれる品種が幾つか作り出されています。しかしこれらはデルフィニジンを持たないため、「青っぽいバラ」に過ぎません。
バラと交配できる植物でデルフィニジンを合成する酵素(の遺伝子=青色遺伝子)を持つ在来種はありません。
ですから、もし「青いバラ」を作ろうとすれば、どうしても遺伝子組換えで青色遺伝子をバラに導入するしか方法はないのです。
1990年に日本のサントリーと豪州のバイオベンチャー・カルジーンパシフィック社(現フロリジン社)は青いバラの共同研究を始め、1991年にはもう、ペチュニアから青色遺伝子を取得して特許を出願しています。
また1994年にはペチュニアの青色遺伝子を入れたバラを作りましたが、花びらにデルフィニジンはありませんでした。
「青いバラ」は夢に終わるのでしょうか?
研究者たちは諦めませんでした。いろいろな植物から青色遺伝子を取得してバラに入れるという、気の遠くなるような研究を重ねて、1996年にパンジーの青色遺伝子でバラの花びらでデルフィニジンを作らせることに成功しました。
これからさらに8年、研究を開始してから14年。やっと「青いバラ」ができました。
「青いバラ」ができるまでは長い道のりでした。
そして一応の「青いバラ」はできました。でも研究者たちはもっと青くするために、いろいろな研究を展開しています。(たとえば、バイオサイエンスとインダストリー 65巻7号354-356頁)
「青いバラ」ができたおかげで、バラに「青」「赤」「黄」の三原色が揃いました。
交配すればどんな新しい色のバラができるのでしょうか?
研究者はバイオテクノロジーの夢を追い続けるのです。
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