以上の点から、今後、食糧危機の回避手段の一つとして、遺伝子組換え技術、あるいはバイオテクノロジーを用いた品種改良、栽培方法の改善、適所適種など規模を拡大した系統的な技術開発による食糧増産が考えられる。遺伝子組換え技術による食糧の増産や質的向上のために、(1)害虫抵抗性、省農薬性の作物、(2)高低温耐性の作物、(3)耐塩性、耐乾燥性の作物、(4)耐酸性土壌性の作物、(5)有用成分を増産する作物、(6)空中窒素固定機能を付与した作物、(7)除草剤耐性の作物、(8)不耕起栽培用の作物、(9)高収量性の作物、(10)長期間保存、利用可能な性質を持った作物、のような作物が開発されている。
　実際、食糧の増産を目的とした遺伝子組換え作物は、一定の成果をあげつつあることから、遺伝子組換え技術、あるいは、バイオテクノロジーは食糧危機脱却の手段の一つであるとは考えられる。しかし、当然のことながら、バイオテクノロジーという科学技術だけで、食糧危機の要因すべてが解決できるわけではなく、持続可能な社会が構築できるわけではない。したがって、先端科学技術を可能な限り利用しつつも、人々の現状の問題点への意識改革や世界各国での対策などを進めることによって、社会全体として、食糧問題を解決していくことが重要なのではないだろうか。